ダイニングやリビングを見渡せる対面式のキッチン。憧れますよね。
私が某社で、初めてキッチンプランをした20年くらい前は、対面式キッチンがあるお家は、「時代の最先端!」って感じでしたが、今ほど世間に浸透してなかったので、多くの家は、キッチンの前に少し背の高い腰壁を作り、そこに造作カウンターを乗せる程度でした。
でも、そのうち、どのメーカーさんも対面側に使えるユニットやカウンター素材などのバリエーションを増やしはじめ、いかに使い勝手の良いキッチンを提案できるかが、プランナーの腕の見せどころになってきました。
その頃、私が様々なお客様と接した中で、キッチンカウンターを1から作り上げるのにポイントとしていた点も含め、今回はキッチンカウンターを特集したいと思います。
レイアウトの参考になりそうな事例も解説付きで多く掲載しますので、自分に合った素敵なキッチンカウンターを作って下さいね。
キッチンカウンターはこうやって作る!キッチンプランの考え方-目次
1.キッチンの基本的な形を知っておこう
I型
I型キッチンは、シンクと調理機器が同じ面にあるタイプのキッチンのこと。
(その横にL字方にカウンターが伸びていても、シンクと調理器具が同じ直線状にある場合はI型と呼んでいました。)
L型
L型キッチンは、シンクと調理機器が違う面にあるタイプのキッチンのこと。
L型キッチンはI型キッチンと比較して
- 常に横に移動するI型キッチンよりも、導線が短くてすむ。
- カップボード(食器棚)の位置によっては、振り返る動きが少なくなるので、作業がしやすい
- コーナー部にカウンター面積が広く取れるので家電を置く場所ができる
などのメリットがあります。
Ⅱ型
Ⅱ型キッチンは、シンクと調理器具を別々の面に平行にレイアウトしたタイプ。
1列の長さは最低1m80cm程度でコンパクトに収めることができますが、キッチン奥行65cm×2に加え、通路幅75cmが必要になるので、正方形のスペースが必要になります。
U型
U型キッチンはⅡ型キッチンのどちらか一方もカウンターが繋がっているプラン。コの字型とも呼ぶこともあります。
シンクと調理器具をつけてないカウンターの奥行はキッチンに合わせても良いし、そうでなくてもOK。
写真のプランは、ALL奥行65cmタイプですが、食器棚に合わせて奥行45cmにすることもできます。
冷蔵庫を横に並べる場合は、冷蔵庫の奥行と合わせることの方が多かったかな?
2.キッチンカウンター(対面キッチンカウンター)のレイアウトについて知っておこう
キッチンの基本的な形を知った上で今度は、建築壁との関係を見て行きましょう。
まず、キッチンをどの壁に面してレイアウトするかによって、「クローズド」「セミオープン」「オープン」に分けることができます。
また、同じ「オープン」でも、建物の壁に面してレイアウトするのか対面式にするのかによって、キッチンカウンターの有無が関係してきます。
2-1.クローズドキッチン
クローズドは、キッチンの形に関係なく、独立キッチンと呼ばれるレイアウトです。
クローズドは他の部屋から見えにくいので、キッチン周りが乱雑になっていても気になりませんが、孤立した印象になりがちです。
I型クローズド
L型クローズド
U型クローズド
2-2.セミオープンキッチン
セミオープンキッチンは、見せると隠すのバランスが取れた開放的なキッチンスタイルです。
私の経験上、対面式キッチンを希望されているお客様に、このタイプのキッチンプランを見せると「こっちの方が良い」となるケースが多かったです。
I型セミオープン
I型キッチンの横にカウンターを設け、食器棚を設けた例。
開放感がありつつも、シンク周りなどの手元は見えないレイアウトです。
L型セミオープン
これもシンク周りがリビング側から丸見えにならないように袖壁をつけた例。
写真右奥の入り口から部屋に入って来た場合、キッチンの天面はほとんど見えないです。
シンク周りを対面側から隠れるようにアルミ製のアクリルパネルをつけた例。
水仕事をしていても、見られているという感覚が少なくてすみます。
U型セミオープン
調理スペースの前が対面式になっています。
2-3.オープンキッチン
オープンキッチンは、どこからでもキッチンが丸見え状態のレイアウト。
どこからでも見えるので、常に綺麗にしておく必要が出てきますが、LDKなどの広い部屋の場合は、開放感が全く違います。
大きな部屋に家具が置いてあるような感覚かな?
また、キッチンを壁づけにするか、対面式にするかで、残りのスペースが大きく変わってきます。
ダイニングを広々と使いたい場合は、壁1枚分省略できるオープンの方が断然おすすめですが、実際は、手元を少し隠したり、料理をしながら会話ができる対面式の方が人気がありました。
I型オープン
I型対面
Ⅱ型対面
L型オープン
L型対面
キッチンカウンターを考える必要が出てくるのは、2-2のセミオープン型と2-3のオープン型です。
前置きが長くなってしまいましたが、本題の“キッチンカウンター”について考えていきましょう。
3.キッチンカウンター(対面キッチンカウンター)の用途を考てみよう
対面式のキッチンが流行りだからと言って、設計士さんやプランナーが提案するキッチンの間取りをそのまま何も考えずに取り入れていたのでは、使い勝手の良いキッチンにはなりません。
まずは、キッチンカウンターをどのように使うかを考えてみましょう。
3-1.目隠しとして使う
対面式キッチンは、キッチンの前にそびえ立つ壁がないので、他のエリアからキッチン周りが丸見え状態になります。
シンクに置きっぱなしの料理後の調理器具や食器が目に飛び込んでくると、せっかくの食事タイムが台無しに。
また、料理後でなくても、キッチンの上は、家電や調味料など、細々した小物を置くスペースとして利用する為、乱雑な印象になりがちです。
これらを隠す(見えにくくする)目的でキッチン前にカウンターを設置するのが“目隠し”型。
隠すことだけが目的であれば、カウンターの奥行は10cmもあれば十分です。
キッチンの前に壁が無いと、こんな感じで丸見えに。
掃除好き、片づけ上手さんでないと、この状態を常に保っておくのは難しいですよね。
キッチンの前に少し壁があるだけで、手元が隠れ目隠しに。
3-2.収納として使う
対面式キッチンの場合、少し前までは、フロア部と吊戸棚+レンジフードと言う組み合わせが多かったのですが、最近のダイニングやリビングも一つの空間になった1LDKタイプでは、全部の一つの部屋として考えることができる吊戸棚なしのキッチンが人気です。
吊戸棚ありとなしの開放感の違い
吊戸棚があると、こんな風に開口部は小さくなり、キッチン側に入る光の量も減ります。
吊戸棚が無い場合は、こんなにすっきりした印象に。
ただし、日ごろあまり使わない物を入れるとは言え、収納量が減ってしまう為、キッチンカウンターを利用して収納を作るとこんな感じ。
背面、側面ともに上手に利用した収納キッチンカウンターですね。
3-3.テーブルとして使う
キッチンカウンターをテーブルとして利用する場合は、様々なレイアウトの方法があるのですが、それは、次の「高さ」の項目で触れることにしておいて、椅子2脚ほどを置けるスペースとして利用するならこんな感じです。
3-4.目隠し、収納、テーブルを組み合わせて使う
少し複雑になりますが、今まで紹介してきた目隠し、収納、テーブルのうち、2つを組み合わせたり、全部を組み合わせるとこんな具合に。
目隠し+テーブル
目隠し+収納
目隠し+収納+テーブル
収納+テーブル
キッチンカウンターを作る際は、見栄えだけでなく、その場所を何の用途に使うのかを考えてからプランしましょう。
4.キッチンカウンター(対面キッチンカウンター)の高さを考えてみよう
キッチンカウンターをどんな用途で使うかを考えた時、最も重要になってくるのが高さです。
キッチンのカウンター高は一般的に85cmです。
キッチンカウンターでキッチンを見えなくしたい(目隠しをする)場合は、これよりも高くする必要があります。
でも、「ここでも食事がしたい!」と思っている場合は、高さだけでなく、カウンターの奥行やそこに置くチェアの高さも考慮する必要が出てきます。
座りやすい椅子の高さは、テーブル天から27~30cmを引いた座面高です。
この数字も踏まえながら、キッチンの天板とキッチンカウンターの関係を見ていきましょう。
キッチンと同じ高さ
これは何も考える必要がありませんね。
フラットキッチンと呼ばれている形です。
ただし、対面側にシンクがある場合は、水の飛び跳ねに注意が必要です。
カウンター奥行が小さすぎると、水が対面側の床に飛び散りやすくなるので、その点も踏まえて、奥行は多くとっておきましょう。
写真はキッチン奥行+20cm程度。
先ほどの例の場合もそうですがフラットカウンターを食事テーブルとして使う場合は、一般的なダイニングテーブルよりも天板が高いことを覚えて置きましょう。
このパターンに置くダイニングチェアの座面高は85-(27~30cm)になります。
キッチンよりも高い
キッチンの手元が見えないようしたいだけであれば、キッチンカウンターの高さは、水栓が半分ほど隠れる程度のFL+1000(フロア天+1m)前後が一般的。
それよりも高くすると、キッチン側から、キッチンカウンターの上に手が届かなくなって使い勝手が悪くなってしまいます。
シンク前のカウンターはキッチンカウンター+20cm程度。
同じような高さでテーブル風にするとこんな感じ。
フラットキッチンよりもカウンターキッチン(ダイニングとして利用するカウンター)が高くなるので、ここに置く椅子の座面を高くする必要がありますが、これは普通のダイニングチェアっぽいですね。
この椅子に座って、カウンターの上で食事というのは難しいと思います。
カウンターキッチンとチェアを組み合わせるなら、こんな風に格好良くするのがおすすめ!
これなら、反対側からキッチンが丸見えになることがない上に格好よさもプラス。
さっきと同じような例ですが、角度を変えてみるとこんな感じ。
吊戸棚も全くないオープンキッチンなので、広々と見え格好良いです。
キッチンよりも低い
一般的なダイニングテーブルと同じような椅子を使いたい場合は、キッチンカウンターの天面はキッチンよりも低くする必要があります。
キッチンカウンターの天面をダイニングテーブルと同じくらいの高さ(70cm前後)にした例。
キッチンよりも低くすると、カウンターが刺さっているような見た目になります。
5.使い勝手の良い高さと奥行を知っておこう
キッチンカウンターを何の目的で使い、その高さはどのくらいなのか?の検討がついたら、奥行も検討する必要が出てきます。
ダイニングとして使う時に必要な奥行
人が食事するときに必要な一人分のサイズは幅80×奥行45cm程度です。
ただし、キッチンカウンターの場合は、朝食や軽食など、食器の点数が少ない食事が多いので奥行は25~30cmあれば十分です。
また、カウンターの上に家電が置きたい場合は、家電の奥行寸法をきっちり図り、脚が全て乗るようにプランしましょう。
収納として使う時に必要な奥行
食器棚の奥行は一般的に45cmです。
これは、奥の物を取り出すのにちょうどよい深さだからですが、カウンター下に作る場合は、お皿1枚分(30cm前後)が一般的です。
6.他の部屋とのバランスを考えてみよう
最後に、キッチンカウンターをプランする時って、キッチン側からの使い勝手ばかりを重要視し過ぎて、他の部屋との兼ね合いを無視しがちです。
- キッチンカウンターの下に収納が多く欲しいからと奥行の深いユニットを組んでしまったために、ダイニングスペースが狭くなってしまった。
- キッチンカウンターに憧れて、カフェ風にしてみたら、椅子を引くスペースがなかった。
こんな失敗が起こるかもしれません。
一番重要なのは、キッチンカウンターを置いても、キッチンに隣接するダイニング、リビングなど、どの部屋も快適に使えること。
「流行りだから。」「憧れだから。」で飛びつくのではなく、自分にとってどの寸法が一番使いやすく、他の部屋ともバランスが取れているかをしっかり考て、キッチンカウンターを考えていきましょう。
[参照元:Houzz Inc]